
岩波ホールにて鑑賞。
こういう良作をDVDスルーにせず、上映してくれたことに感謝したいです。
名優たちの演技が光る、心温まる笑いと涙あふれるステキな物語でした。
「ヴィクトリア女王 世紀の愛」でアルバート公を演じたルパート・フレンド。
先日ル・シネマで鑑賞した「わたしの可愛い人 シェリ」でも印象深かった彼を目当てに観に行ったのですが、ストーリーそのものの素晴らしさにすっかり魅了された108分でした。
映画は最愛の夫を亡くしたミセス・パルフリーがロンドンの街角にある長期滞在型ホテル「クレアモント」にやってきたところから始まります。
滞在客のほとんどは独り身の老紳士or淑女たち。
それぞれに孤独ながらも好奇心いっぱいでユーモラスな登場人物たちに、たくさん笑わされました。
あるときミセス・パルフリーがロンドンに住む孫、デズモンドのことを話したところ、全員が興味を示します。
しかしデズモンドは忙しいようで留守電にメッセージを残しても電話もかけてこないし、ホテルにも訪ねてきません。
誰も訪ねてこない言い訳が尽きて困っているミセス・パルフリー。
そんなとき、偶然に出会った作家志望の若者ルードヴィックに孫の代わりをしてくれるよう頼んだのでした。
ホテルの住人たちはミセス・パルフリーを訪ねてやってきたハンサムな若者に夢中になり、すっかり本物の孫だと信じこんでしまいます。
そんなとき、本物のデズモンドが前ぶれもなく現れて…。
ミセス・パルフリーを演じたジョーン・プロウライトはちょっと気難しそうに見えますが、とてもエレガントでキュートなおばあちゃん。
ワーズワースの詩集をいつも枕元に置いている老婦人ミセス・パルフリーを魅力溢れる人物に作り上げていました。
ガールフレンドと別れたばかりで、人間関係を築くことに自信をなくしかけていたルードヴィックはミセス・パルフリーと出会ったことで少しずつ変わっていきます。
作家(志望)としての好奇心からミセス・パルフリーや彼女をとりまくクレアモントホテルの住人たちに関心を持ち、そこから何かをつかもうとするひたむきさも良かったです。
ベテラン俳優陣に囲まれた新人ルパート・フレンドの初々しい演技は光っていました。
“Introducing Rupert Friend”…となっていたので「おや?」っと思ったのですがこの映画は2005年の作品とのこと。
「ヴィクトリア女王」も「シェリ」も2009年の作品ですから、実質的にはこちらの「クレアモントホテル」がデビュー作と言えるようです。
人生の終着点に佇む老婦人と、人生の出発点に迷う若者の、心温まる交流を描いた人情味あふれる映画でした。
ちょっと出来過ぎのフェアリーテイル感もあるのですが、
ワーズワースの詩「水仙」や
ルードヴィックが弾き語りをする美しい歌「For All We Know」
ロマンスのきっかけとなる古い映画「Brief Encounter(逢いびき)」など
印象深いエピソードや場面が多く、何度か観返したい作品です。
年末の12月に入って今年のMYベスト10に入りそうな良作に出会えて、本当に嬉しかったです。