2009.07.05 Sunday
「扉をたたく人」
JUGEMテーマ:映画

毎年、年末に年間ランキングをつけていますが、
この作品はTOP10入り確実です。
感動しました。
音楽がキーワードになっているからかもしれませんが
「ONCE ダブリンの街角で」を観たときのことを思い出しました。
クチコミで徐々に上映館数を増やし、ロングランヒットしたのも共通点。
音楽が好きな人にはぜひ観ていただきたい作品です。
アフリカン・ドラム“ジャンベ”のリズムが
人と人とを結び、会話以上に心を通わせる様子に胸を打たれました。
主演のリチャード・ジェンキンスはこの役でアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされていました。
惜しくも受賞を逃したものの、見事な演技だったと思います。
受賞したショーン・ペン(ミルク)にも負けないくらい素晴らしかったです。
今年ノミネートされていた5人の候補の作品を、これですべて観たことになりますが、
個人的には、リチャード・ジェンキンスにオスカーを取って欲しかった…と思っています。
最愛の妻を亡くし、経済学の授業や研究にもやりがいを見失った孤独な大学教授。
抜け殻のような人生を“忙しいふり”をして、ただやりすごす毎日。
そんな彼が、シリアからの移民でミュージシャンの青年タレクと出会い
“ジャンベ”を教わることで、徐々に変わっていきます。
孤独な大学教授ということで決して口数の多い人ではないのですが、
彼の行動一つひとつがとても自然で、その思いがスクリーンを通してヒシヒシと伝わってきました。
監督のトム・マッカーシーはこれが長編監督2作目ということですが、
行間を読ませるような演出の上手さにしびれました。
もちろん役者の演技のうまさもありますが、
一つひとつのシーンに漂う人々の「思い」が心にしみる撮り方で、
どの場面からもセリフ以上のものが伝わってきました。
特にラストシーン…空港と地下鉄の駅のシーンは忘れられない場面です。
移民に対して寛容だったアメリカが、9.11以降変わってしまった…
その時代の流れに翻弄される人々の物語ともとれますが、
年老いた大学教授と若いミュージシャンの交流という点から
世代間格差という問題も見え隠れしていました。
見る人によって様々な捉え方のできる作品です。
こういう、地味だけれど丁寧に撮られた、深みのある良質の小作品を、
年に1本観られたら、それは幸せなことだと感じています。
今年もまた、年間チャートをつけるのが楽しみになってきました。


